タイプライターを背負った男(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ編)

 この写真はボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボの様子である。

 内戦のすさまじさを物語るこのビルは窓ガラスがグシャグシャの状態で
ひとたび地震でも起これば木っ端微塵となりそうなビルである。
ボスニア国内では このビルを危険だから壊してしまおうという意見と
これはボスニア内戦を物語るモニュメント・負の遺産として後世に残そう
という意見が真っ向から対立している。

 私は後者の意見を支持する。
 修復などしつつ原形を限りなく残し危険度を下げて、後世に伝えるべき
だと思う。2度と同じ過ちを犯さないためにも・・・

さて、クロアチアのスプリットという町からバスに揺られ 途中、
モスタルという壊滅的被害をうけたボスニアのモスレム人の拠点の町の
破壊の限りを尽くされた様を車窓から見て、身震いし、やっとの思いで
サラエボのバスターミナルに到着しました。

当時、韓国人を含む4人でやってきていた私たちは今の時期、丁度
ボスニアで統一選挙が行われているのを知っていた。皆、歴史的瞬間を
見届けたいという気持ちでいっぱいで、まさか世界中の報道陣が集まって
いてどのホテルもまんぱんになるという予想をする事を忘れていた。

”あぁここがサラエボか・・”という到着の感動 に浸っているとき、
”君たちはどこのホテルに泊まるんだい?”
と一人の西洋人が声をかけてきた。

”これから探す”って言ったら、
”この2,3日は無理だよ。 今、何の時期か知っているのかい?”
”もちろん!統一選挙だろ。その 歴史的瞬間を見に来たんだよ。”
と私たち。

 それに反論して彼が言うには、
”だから大変なんだ。報道陣が皆ホテルを押さえているんだぞ。斯く言う
私もその一人だが・・・”
と言って自らの背中を指差す。

そこにはカバーをかぶったタイプライターがしょわれていた。
かっこいぃー!商売道具のタイプライターをしょって移動するなんて・・・

くぅ、かっこいぃ。

 黒色のジーンズに、青地のギンガムチェックのシャツに黒のジャーナ
リスト・ジャケットといういでたちで、背中にタイプライター。
名前を聞くと”ファビオだ!”と一言。

残念ながら彼の写真はない。

結局、彼が知り合いの民家に泊めてもらえるよう頼んでくれた。
その家の水は内戦の影響で朝7時から1時間しか使えないようになっていた。
それなのにシャワーを浴びたいか?と聞いて答える間もなく、1Km離れた所
まで行って水を わざわざ汲んで来てくれた。
食事は何が食べたい?と聞くのでボスニアの民族料理!と言うとその家の
おばあさんまで出てきて家族に伝わる家庭料理を作ってくれた。

トルコ支配の影響で基本はトルコ料理に似ているがおいしくて調子に乗って
おかわりを連発しているともうお腹一杯 と言っているのに
”まだ食べろ!おいしいだろう。”とすすめまくる。

お腹一杯でお腹をさすって いたら今度は1年で数回、お祝いのときにしか
食べないという自家製のデザートを奥から 取り出してきてすすめてくれました。

有名ホテルもこんな惨状

窓ガラスの吹っ飛んだ中央郵便局

半分焼けてしまっているサラエボ中央駅

続きの話…

サラエボのある家庭の話~ボスニア戦争の真実~

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